鎌倉または湘南へ

小説や漫画を読む醍醐味は,なんといっても,自分がイマいる空間・時間から切り離された場所へ行ってしまえることにあって,夏の暑い日に,京極夏彦さんの『鉄鼠の檻』を読むのもオツなもんです。(暑さに身をまかせて『姑獲鳥の夏』を読むのも,それはそれであり。特に冒頭とか。)

鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)

鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)

姑獲鳥の夏 (KODANSHA NOVELS)

姑獲鳥の夏 (KODANSHA NOVELS)

そんな発想の元,本日は,「鎌倉または湘南の風を感じられるような本」をいくつか並べてみようと思います。

まずは,

黄色い目の魚 (新潮文庫)

黄色い目の魚 (新潮文庫)

この本は,ほんとに個人的に思い入れ深い作品です。
いまは絶版になってしまっているようですが,新潮社の『新潮現代童話館』という本に『黄色い目の魚』というタイトル*1で,小説の一部(目次で「黄色い目の魚」とある部分)が収められてまして,読んだ当時は小学校高学年くらいだったかな,インパクトのある作品でした。
それから何年もときが流れて,ふと中吊り広告や本屋の店頭で「黄色い目の魚」というタイトルを見かけるようになって,「あれ???」「もしかして???」となり,再会した作品です。文庫本のあとがきを読んで,「ああ,やっぱりあの作品だったんだ!」と嬉しかった。
自分の信じるカタチを貫くことは,ときとして周囲との摩擦を生んだり,馴染めなくさせたりするものだけど,不器用ながらもぶれない登場人物たちが愛おしい。そして,物事に向かう姿勢としてのマジメ・フマジメの選択を思春期に突きつけられた木島くんは,ラッキーだと思う。


つぎは,鉄板ですかね,

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃

先日,はからずもロケ地(?)巡りをしてました。江ノ電沿いのカフェ*2とか力餅*3とか腰越*4とか。1巻のすずちゃんが号泣するシーンには,心をがっつりと持っていかれます。無音のようで,蝉の声をかき消すほどの慟哭。それがあの絵から伝わってきます。


こちらも鉄板か,

SLAM DUNK 31 (ジャンプ・コミックス)

SLAM DUNK 31 (ジャンプ・コミックス)

ちょうど高校入学前あたりに一気に読んで,バスケ部に入りたくなりましたが,やめときました(笑)「水戸洋平」の漢らしさが結構好きです。自分も周りも見えている男性で,あの個性豊かなキャラ達の中では,ちょっと身近な存在に感じるところなど。


鎌倉が舞台といえば,この往年の名作も,

こころ (岩波文庫)

こころ (岩波文庫)

こちらは時代が異なるので,いまの風は感じられませんが。幾多もの解釈を生み出し続けている作品ですね。
はじめて読んだ頃は,”Kの自殺のきっかけは自分にある”と思ったまま先生は命を絶った,と捉えていたのですが,再読するうちに,”それだけではなかった”ことに先生自身気づきつつも,自分もまたKのように命を絶つしかなかった,という認識に変わりました。漱石の作品は,印象的なフレーズが多いですよね。『こころ』では,「恋は罪悪ですよ」と「向上心のないやつは馬鹿だ」を挙げておきたいと思います。


最近読んだので,これも追加。(2012/9/29)

北鎌倉駅は,昔の面影を多分に残している駅ですよね。小津安二郎作品にも映っていたりして,今とほとんど変わらない風情に,嬉しくなります。現代風味たっぷりな小説ですが,古書の匂いがふんわりと立ちのぼってくる作品でもあります。そして,曲者らしき母が気になります。

取りあえずは,このくらいで。
また気づいたら追加してみようと思います。

*1:実家に置いてあるので,手元で確認できていませんが,たしか,そうだったはず。この本,他にも錚々たる方々が執筆されてました。当時はまだ若手だった(?)江國香織さんも入っていたり。バスケ少年の話や蚊星人の話や,他にも記憶に残っている話がたくさんあります。なぜ絶版になってしまったのか...。

*2:3巻,陽のあたる坂道

*3:3巻,陽のあたる坂道

*4:みぽりん家のしらす。4巻,おいしい ごはん。など