ツルチック ー『眠る盃』より

向田邦子さんの随筆(小説も)が好きで,ふと読み返したりします。
思い出や日常のエピソードを簡潔に鮮やかに描き出してらして,そして,時代背景は違えど,「そうそう,こういうことあったなあ」と共感することもあり。
そんな中に,「ツルチック」という題で書かれた随筆があります。

 小学生の頃,父親が持って帰ってきた「ツルチック」という名前のおいしいものを飲んだ記憶があるのだが,誰に聞いても心当たりがない,聞いたことがないと言われる。ムキになって何人にもその話をしてみていたが,その度に自分の記憶を潤色していってしまっていることに気がついた。
思い出にも鮮度があるのだから,判らないものは判らないままに,記憶の底に仕舞い直そう。

といった内容なのですが,
わたしには,ツルチックに相当する映画があります。
とはいえ,私の記憶は向田さんのそれよりさらにあやふやで,この記事を書く前に,もしかしたら...と一縷の望みをもってGoogle先生にたずねてみましたが,情報の海に溺れるだけと相成りました。

小学校低学年の頃(1980〜90年代くらい),おそらく夏休みの夜に母と夜更かしして観ていたのだと思うのですが,

  • 第2次世界大戦
  • ナチスによる人種差別問題が絡んでいる
  • ・「P」という文字を胸に刺繍された少年が,おそらく主人公(これは,差別される側としての目印だった気がする)
  • ・少年は逃げていた?
  • ・脱走兵とおぼしき軍人との交流が描かれている
  • ・映画のラストの方で,軍人は見つかり,銃殺されたような...
  • ・少年のその後は描かれずに,エンディングだった?

といった要素が含まれていた映画だったように,ぼんやりと記憶しています。

民放で,吹き替えのものを放送していたはずですから,知名度のある映画だとは思うのですが。
母にたずねてみても,まったく記憶にないとのこと。

向田さんは,「続・ツルチック」という題で,「あなたの飲まれたツルチックは,本当にあったんですよ」という後日談を書かれていらっしゃいますが,私のツルチック映画の正体がわかる日も,いつかやってくるでしょうか。

眠る盃 (講談社文庫)

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